白百合の人生漂流記

徒然に百合や法律学(法解釈学)の勉強、個人的な興味関心事項について備忘録的に語ります。

民事訴訟法-当事者に関する能力

・当事者能力とは

訴訟要件の一つ。=当事者能力を有しないということは本案判決の名宛人となることができないことであるから。従って、当事者能力を持たない者を当事者とする訴えについては、訴えは不適法として却下される。

 

・訴訟能力

単独で有効に訴訟行為をし、または受けるために必要な能力

e.g.)自ら訴えを提起したり、訴訟代理人を選任したりするなど。

実体法上の行為能力に対応する。

民訴法に特別の定めがない限り、民法の規律に従う。

民法上完全な行為能力が認められるものについては、訴訟能力もまた認められる。

満18歳(20歳)の自然人は原則として、完全な行為能力が認められているため、訴訟能力も認められることになる。

民法上行為能力が制限される者については、訴訟法上では訴訟無能力者とされる。(未成年や成年被後見人)

被保佐人、被補助人は制限的訴訟能力者と呼ばれる。

 

訴訟能力が要求される範囲

→陳述や証言に関しては訴訟能力が要求されない。=陳述の内容判断に関して、impは持つが、陳述そのものは可能であり、直ちに結果にimpを持つものではないから。

民法上の代理とパラレルに考えて、任意代理人に関しても訴訟能力は不要。

 

訴訟能力欠缺の効果

→はじめから無効。

背景:法律行為は有効であるが、取り消し可能であるという構成をとると、裁判の円滑な進行を妨げる。

補正と追認→訴訟能力欠缺が発覚したときに、裁判所は補正を当事者に瑕疵を治癒する余地を認めている。これが、補正である。法定代理人など、当事者のために有効に訴訟行為をすることができるものを出頭させて、それまでの手続きについて追認を求めるという構造である。追認した→今までの手続きが遡って有効に。追認しない→無効が確定。

なお、訴訟能力は訴訟要件でもあるが、当事者の側が争うことができる点でもあるので、訴訟能力を主張して上訴することができる。この場合、上訴に対しては、不適法却下という形ではなく、上訴棄却という形をとる。

また、訴訟無能力者または制限的訴訟能力者であることを看過して、彼らの敗訴とする本案判決がなされた場合にも、上訴・最新の訴えを提起して取り消しを求めることができる。

 

・未成年者

完全な無能力者

=自ら訴訟行為をすることができず、法定代理人による必要

→訴訟の専門性の高さ、法定代理人の同意を要するとすると、訴訟の円滑の進行を妨げる。

未成年者が自らした訴訟行為は法定代理人が追認しない、または、成年後自ら追認しない限り、無効

成年被後見人についても同様

 

被保佐人・被補助人

当該行為の無効

同意が不要な場合→相手方の提起した訴えや上訴について訴訟行為をする場合

=相手方訴訟当事者との均衡

 

・意思無能力者

行為時に意思無能力であれば、無効

 

・訴訟上の代理

効果の帰属については民法とパラレル

訴訟代理人を選任したからといって、自らの訴訟能力・弁論能力を失うわけではない。これも民法とパラレル

当事者本人は訴訟代理人の陳述に対して取り消し・訂正することができる。=更正権

補佐人→専門的事項に関して専門家を補佐人とできる

 

法定代理→基本は民法とパラレル

訴訟法上の特別代理人→訴訟無能力者に法定代理人がいなかったり、法定代理人利益相反に当たる場合など、本来は家庭裁判所法定代理人を選任すべきだが、それは遅滞により相手方当事者に損害が発生することが起こりうる場合に、受訴裁判所の裁判長が特別代理人を選任することを認めるという制度

 

 ・訴えの利益

給付の訴えの利益

現在給付の訴えの利益→給付判決を求める訴えや給付請求権があるにも関わらずそれが履行されていない状況などは当然に訴えの利益が存在する。

確定した給付判決について再度給付判決をえる必要は認められないが、いくつか例外が存在する。e.g.)執行正本が得られず、強制執行が不可能な場合には訴えの利益が認められる。

強制執行の可否は問題とならない。

 

将来給付の訴えの利益

なお履行すべき状態にない請求権について、あらかじめ給付判決を求める訴えである。

現時点であらかじめ請求をする必要があるという特別な事情がある場合に限って認められる。

すなわち、現実化する蓋然性が十分に認められるか、現時点で給付判決をしておくべき必要性が認められるか。といった点が考慮される。

現時点で給付判決をしておくべき必要性が認められるようなケースとして、定期行為や義務の履行遅滞により厳酷が著しい損害を被る場合がある。また、債務者が義務の存在や内容を現に争っている事情から、原告の主張する時期における履行が期待できないことが明らかな場合がある。さらには、権利者の保護を必要とする事情がすでに顕在化している場合に、本来の給付請求権から派生する将来の給付請求権について判決を求める場合がある。(代償請求)

 

判例:請求権の基礎となるべき事実関係および法律関係がすでに存在し、継続が予測される。将来における事情の変動があらかじめ明確に予測しうる事由に限られる。請求異議の訴えによりその発生を証明してのみ執行を阻止しうるという負担を債務者に課しても格別不当とは言えない場合に限って認められる。

 

確認の訴えの利益

確認の訴えが手段として適切かどうか、確認対象の選択が適切かどうか、確認判決をすべき必要性が現に認められるか、被告とされているものが確認判決の名宛人として適切かどうか。